新潟県栃尾市のある小学校(1999.6.3)
Q
新潟県栃尾市の山間部で、1枚の棚田を作っています。生徒16人と私、米作りの先生のおじいちゃん達です。
今年この地方の在来種のもち<梅三郎>を水苗代から起こしました。今まで消毒農薬ゼロですが、この1週間イナミズゾウムシが発生しています。専業農家の方や農協に聞いても、試験場でも{卵を産んでいるからもう根っこもやられる。薬をまくしかない。}という意見です。
子どもたちの半数は、使いたくない。何のために環境の学習をしたのかと考えています。半数はこのまま収穫が減るのなら使うのもやむをえない、という考えです。
私たちが選択する道は、2つに1つなんでしょうか? 別の道があるのなら、教えてください。
A
初めまして、籾村セーフティーライス倶楽部の幹事の岸です。
イネミズゾウムシは昭和57年頃に日本に上陸したアメリカ産の害虫です。全国的にはたぶん昭和60年頃から発生が認められたと思います。実は、ちょうどその頃、私は学校を卒業して、農業改良普及員をしていた頃でした。当時はかつてない新害虫で大騒ぎしていました。現在は、箱苗育苗して田植えする場合は苗箱に殺虫剤を散布すると被害はくい止められると『いわれいます』。
さて、ここからは、私も私がかつてのような農業改良普及員でしたら、早速農薬を散布しましょうといいますが、有機無農薬で米を栽培している一農家として、お話させていただきます。
たぶん、稲の根に卵が産えつけられていると思います。そして、卵からかえった幼虫が根を食害し、稲の分けつを阻害して、株が十分張らず、『減収』する可能性は確かにあります。しかし、本田で農薬を散布しても、農薬が直接かからない土の中にいる幼虫に対しての効果は乏しいと思います。
岡山と新潟では、気象条件等の差はありますが、稲の病害虫にはもっと恐ろしいものがあります。私の経験からして、イネミズゾウムシはたいしたことないとおもいます。むしろ、いもち病、トビイロウンカ、そして雑草が一番稲の減収につながると思います。
私どもは5月30日に無農薬栽培米の田植えをしました。そして、今現在、1株にイネミズゾウムシが10〜20匹ついています。しかしこれは毎年のことです。確かにそのために収穫量が少ないのかもしれませんが、それでも、10アールあたり300〜400sの収穫があります。これは決して多くはありませんが、有機無農薬ですから仕方ありません。
勉強のために、米作りをするのなら、むしろ、いろんな病害虫が稲にどの様な害を与えるのかを見ることの大切です。結論的には、このまま頑張って下さい。たぶん半作以下の大きな減収にはなりません。むしろ、イネミズゾウムシに根を食われても、それ以上に根を出す元気な稲を作ることが大切だと思います。
たとえば、雑草を丁寧に取る、田んぼの周囲の雑草をきれいに刈る。田んぼに入ってブクブクとガスが発生していたら除草機を押したり田んぼを干して有毒ガスを除去する。田んぼに入る水が冷たいなら迂回水路等で水温の維持に努める・・・・・等稲を元気に育てる作業を子供たちとしっかりやって下さい。きっと稲もそれに答えてくれます。万が一その他の病害虫の被害に遭っても、子供たちが、米作りの大変さを認識し、農家の苦労を認識し、毎日食べるお米が本当に大切なもので大切に残さず食べなければならないことが分かれば、学習の目的は達成できると思います。
道は、2つに1つでしょうかと言われますが、2つとは、農薬を使用するかしないかですか?
元々、道は1つです。せっかく頑張ったんですから、稲を愛情もって元気に育てるのが道だと思います。農薬に頼るのは道ではありません。
さて、ちなみに、私のイネミズゾウムシの農薬を使わない防除法ですが、私も苗は水苗代でしていますが、有機無農薬栽培する田んぼでは、周囲の農家が田植えを済ませて、周囲の田んぼに稲が植わり、イネミズゾウムシがそれらの田んぼに行ってから田植えするようにしています。効果があるのかどうかは分かりませんが、田植えはなるべく遅く、稲刈りはなるべく早くなるように品種や栽培法を考えて、出来るだけ田んぼに稲がいる期間を短くすることが、病害虫にさらされる期間を短くし、被害を軽減する方法だと思います。
大変長々と書いてすいませんでした。
また、何かありましたらメール下さい。
返事
ありがとうございます。子どもたちは考えて考えて、でも結論が出なくて、それでも薬はまだまかないでほしいと、話しています。
今まで、田植えと稲刈りしかしなかった子どもたちが、あんなに苦しそうに<わからん。いくら考えても、農薬つかうかどうかえらべんわ>と悩んでくれました。
自分の毎日食べているものを知りたいと思って1年間米作りに取り組んでみようと考え4月8日に水苗代作りからスタートしました。
泥をこねる子どもたちの顔がかわいくって、いぶりでならす子供の姿がたくましくって、これからの米作りを楽しみにしていたはずでした。
それなのにちょっとの失敗で、どうしようどうしようと慌てて、こんな失敗に弱い自分がいることを知ることもできました。
もっと米作りを楽しみたいと思いました。子どもたちにウンカでやられた棚田の話をしました。
「へえ、大胆だねえ。それでも薬まかなかったんだろうか。どうしてか、先生きいとくれね。」とうれしそうに話していました。
元気な稲を育てる話、明日、子どもたちに伝えます。また、メールします。私も元気をもらいました。